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遺言執行者は、相続人を代理して遺言を執行します。つまり遺言者本人の財産を遺言書の記載どおりに受遺者(遺言によって財産をもらう人)に分配します。銀行預金を払い戻したり不動産の所有権移転手続を行ったりします。
実際に相続を経験したことのある人でしたらよくわかると思いますが、銀行預金ひとつを払い戻すにしても「相続人全員の相続関係を証明する戸籍」、「相続人全員の印鑑証明書」を揃えなければなりませんし、そして「相続人代表者選任届」あるいは「遺産分割協議書」を作成してそこに「相続人全員の実印を押印」したものを提出しなければ金融機関は払戻しに応じません。これはもちろん「無権利者」に払い戻すことを防ぐ意味で必要な手続なのですが、これを銀行口座の数だけ行うとすると大変な労力です。ましてや相続人に海外在住者がいたり外国国籍を取った人がいた場合などは、相続関係を証明するだけでも大変です。不動産の所有権移転登記についても同じように相続人全員の戸籍を揃え、遺産分割協議書を作成し、実印を押印しなければ登記できません。
通常の相続手続の場合は、だれか故人に近しい人がこれらの手続を行うことが多いと思いますが、その人が仕事を持っていたりするとなかなか時間も取れないでしょうし慣れないと手間もかかります。相続人の数が多かったり日本全国に散らばっていたりすると書類を取り寄せることも一苦労ですし、遺産分割協議をまとめるのも大変です。経験者に話を聞くと大体皆さん「大変だった」と答えます。
このようなときに「公正証書遺言」があってかつ「遺言執行者が選任されていた」場合はどうでしょうか。遺言者が亡くなったとの連絡が遺言執行者に伝われば、すぐに遺言の執行手続に入れます(もっとも通常は葬儀等が終わってある程度経ってから執行開始となりますが)。遺言執行者が選任されていると、遺言公正証書正本と遺言執行者の本人確認で金融機関の預貯金口座の払戻しが出来ます。遺言執行者が全て払戻しを受け、その後遺言書の記載どおりに分配をします。相続人(受遺者)は何もせずに待っていれば手続は終わります。不動産の所有権移転手続も同様です。遺言執行者がその職務で遺言書記載通りに登記手続が出来ます。
このように遺言執行者が選任されていれば、相続人(受遺者)は原則として何もする必要がありません(もっとも実際には誰か一人あるいは数人に連絡役となっていただきますが)。
相続人(受遺者)の負担を最大限軽減し、かつトラブル発生の可能性を抑えるために「公正証書遺言の作成」と「遺言執行者の選任」は、非常に有用なリスクマネジメントの方法なのです。
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